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分離浮性卵と呼ばれる卵形態を有する魚は, 卵の直径が0.5〜1 mm程度と非常に小さく, 自然界では浮く性質を獲得したことから, 海面での波風によって広く拡散させ, 種を保存する生残戦略をとっています. また, ふ化した後は非常に未熟で自分では泳げず, 臓器が発達しておらず, 口も開いておりません (図1,2, 3). 成長は図2, 3に見られるような, 母親から受け継いだ透明な玉や黒い玉に入っており, これを吸収して臓器を発達させ, 泳げるようになっていきます. また, このような種の赤ちゃんは, 成長が進むにつれて水の中で重くなっていき, 沈みます.
海の中だと波や熱による対流が起こり, 数十mも沈むことはまれで, また沈むことで死ぬようなことは起こりませんが, 水槽の中だとそうはいきません. 水槽の底面へ沈んだ赤ちゃんは流れの滞った場所へたどり着くか, 水槽の壁面と接触することで傷が付き, 水中のバクテリアの影響などでやがて死んでしまいます. 図にあるようなキジハタという種の卵は数多く産卵されますが, 実は水槽の中で大人になれるのはわずか1/10,000程度となっています.
【目的】キジハタの種苗生産における初期減耗の要因は, 主に初回摂餌の失敗や夜間の沈降による死亡(沈降死)に大別される. その中でも沈降死の対策およびその原因を明らかにすることを目的として, 本種の沈降が観測される, ふ化後から5日齢までの, 体密度の変化を計測した.
【方法】本種の体密度を計測するために必要な飼育槽には, 1 kLアルテミアふ化槽を用いた. また, その中に卵10,000粒およびSシオミズツボワムシを10 個/mLの密度で収容し維持した. さらに槽内へ550±50 mL/minで通気を施し, 水面での光量を10,000 Luxとなるよう調整した. 測定器は, JIS K 7112(プラスチック-非プラスチックの密度および比重の測定法D法)を応用したものを, アクリルの直管内に人工海水より密度勾配溶液を調製し, 作成した. また, 測定器の中へ仔魚6尾を収容し, 沈降加速度が0 m/s2となったときのメモリの値と指標間距離から相対密度を算出し, その日時齢での平均密度とした. 同時に全長および卵黄, 油球の体積を算出し, 沈降における原因について検討した.
【結果】仔魚の沈降は,飼育水の密度1.024 g/cm3と同程度となる日齢3の12時より次第に起こると考えられる. また, 測定を開始したふ化後0日の20時では, 仔魚の平均体密度は1.018 g/cm3となり, その後, 緩やかな上昇と減少を周期的に繰り返す概日リズムを示した. さらに, 仔魚は臓器の形成や活動のためのエネルギーとして卵黄と油球の消費すなわち体積の収縮を伴うが, これによって密度の増加, および油球の減少による浮力の低下が原因となって, 沈降をもたらすと考えられる.
概要
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